韓 丘庸





『萬歳暦』(Ⅰ)
        -「旧暦と暮らす」(松村賢治・著)に見る-



 最近出版された松村賢治氏の『旧暦と暮らすースローライフの知恵ごよみー』は、わたしたち現代人に改めて新しい価値観を植え付ける良書として、今静かなブームを起こしつつあ
る。ここには日頃忘れかけている「旧暦」の功罪を見直すための先達の優れた英知と教訓がちりばめられていて説得力がある。
 この書は「旧暦は繊細な季節の変化と寄り添いながら徐々に姿かたちを調え、日本仕様のカレンダーとして定着した」と、中国伝来1400年を強調しつつ改めてその意義を問うてい
る。しかし、朝鮮・韓国の場合は少し事情が異なる。
 朝鮮・韓国人は南北を問わず、その精神世界の底流には「儒教精神」が流れていて、日常の社会生活全般は「儒教」を社会的規範としていることがとても多い。今の若い世代間では儒教精神がかなり、薄らいできていて、嘆かわしい限りだと指摘されているが、それでも大筋のところではしっかりと厳しく守られているのが現状である。
 それが年間行事や祭事習俗、通過儀礼や言語芸術など、殊に多岐に亘った民俗分野においては忠実に実行されている点では日本や中国とも大きな違いがあり、東アジア文化の中では最もその伝統が守られている国といえるだろう。
 朝鮮民族は基本的には今でも、風水や陰陽五行に依拠するところが多く、シャーマンの非科学性を批判しながらも、政治家であれ、大会社の社長であれ、また有識者であれ無条件にそれを信じ固執する人が少なくない。「非科学は哲学である」と言う見方は、日本より遥かに朝鮮の方が大きい。
 近ごろ日本でも旧暦が見直され、それによって生活の基準を計る人々も増幅し、重宝がられている。
 この本では全体を七つのセクションに振り分けている。
  ①「月と太陽から送られるメッセージ」基本的な旧暦に対する知識から始まって、月の満ち欠けから旧暦の春夏秋冬をみる。
  ②「季節を見つめる」日本人の季節感を混乱させている年中行事ほか。
  ③「自然のリズムから得た暮らしのヒント」
  ④「旧暦を暮らす人々」自然や趣味で旧暦を楽しんでいる人の手記
  ⑤「なぜ旧暦がつかわなくなってしまったのか」
  ⑥「アジアの中の地域としてー科学的なもの、非科学的なものー」
  ⑦「今私たちは季節のどこにいるか」
等、いろいろな角度から旧暦の効用を説きながら、現代を生きるわれわれの生活に「究極」のエコロジカルな暮らし方を問いただし、心の安らぎと癒しを齎す新生科学としての原理を説いている。
 もちろん、日本での旧暦使用は朝鮮・韓国での使用頻度とは比べものにならないが、旧暦が単に暦の上だけの問題ではなく、経済優先の疲労した日常生活の中で当然の規範として守られていくところの意味の重さを大切にせねばならないのではないだろうか。

 *『旧暦と暮らす』(松村賢治・著)ビジネス社・02'刊、(定価1600+税)







Copyright (C) 1997 copyrights.kitajuujiseibungaku All Rights Reserved.