韓 丘庸





新しい韓国の映画文学に見る
         ―「冬のソナタ」シンドローム ―

 ユジンとジュンサンの「永遠の愛」を見守ったPolaris(北極星)。
「すべての星が移動してもポラリスはずっと同じ場所で輝いているんだよね。僕がきみのポラリスになってあげたら、もう道に迷うことなんてないよ」
 キム・ウニ、ユン・ウンギョンの『冬のソナタ』(宮本尚寛・訳、03・NHK出版)が映画化され、一年が経過したが、まさにNHK連続ドラマとして今もリズミカルに快調に走り続けている。
 韓国映画が今、日本をはじめ、アジアの映画界を「韓流」スタイルで席巻し始め、大衆文化を揺さぶり始めている。主人公の「ペ・ヨン様」に日本の中年女性だけでなく、在日同胞女性もしっかりとはまり込んでしまって、暫くは脱皮できないかも知れない。
 「純情」から長い間遠ざかっていた人々が、再び精気を取り戻し、それを一気に手繰り寄せているからではないか。この純情ものに肖って「冬のソナタ」グッズも賑やかである。K1 8WGダイヤつきネックレス、携帯ストラップなどと、商魂たくましく売り込む。
 その一方では、「ヨン様」の撮影舞台である江原道の春川や竜平へのリゾート見学ツアーで「恋人探し」、亡くなった「恋人」の手記出版など際限がない。もうそろそろネタ切れになるのではないかと思われながらも、当分は未だ続きそうだ。
 大手新聞は勿論のこと、「赤旗」日曜版から、聖教新聞まで<涙のヒロイン>を演ずる女優チェ・ジウのグラビヤを掲げる。「女性自身」は「ヨン様」の昔の生活は苦しくて、「チヂミ売り」をしていたのだと、一頁足らずの独占記事で雑誌の購買は倍増する。
 こうした純愛ものは、常に社会の不安定要素が山積し、暗く沈んでいる時に絶大なる効果がある。今日のように精神的枯渇の中で生きる人々の心は傷つきやすく、せめてもの心の拠り所を求めての一時の避難所となり、一抹の清涼剤になるのかもしれない。
 オ・スヨンの『秋の童話』(宮本尚寛・訳、02徳間書店)を源流とし、「冬のソナタ」に引き続き、ユン・ソンヒの『美しき日々』(宮本尚寛・安岡明子・訳、03NHK出版)、アン・ドヒョンの『幸せのねむる川』(藤田優美子・訳、03青春出版社)、イ・チソンの『チソン愛してるよ』(金重明・訳、03アスペクト)と、様相を変えながら、更なる心の安寧を願って読者と視聴者の心を惑わす。
 こうした映画文学の翻訳ものは、映像文化との同時進行の中で事前評価を勝ち取り、視聴覚の中へ積極的に潜入してくる。
 翻訳本そのものだけであれば、エンターなものでも「文学作品」としての是非を問うだろうが、映像が先走りして、そのイメージつくりと、お膳立てが完成している場合には翻訳本は二番煎じとなり、映像と抱き合わせで、読者に提供することになる。
韓国で流した涙の数が、日本では倍増するだろうと言う読みがまさに「韓流」である。



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